ネットショップで洋服を販売するとき、フリマアプリで洋服を出品するときに必要なのが写真です。 写真の仕上がりは当然購買意欲に差が出てくるポイントのため、仕上がりのよい洋服写真を撮影したいところです。 今回は上手に洋服を撮影したい方のために、平置き撮影やハンガー撮影でのポイントや洋服撮影に必要な機材とセッティング、洋服をきれいに撮影するためのライティング 、カメラの設定もあわせて解説しますので、気になる方は是非参考にしてください。
洋服を上手に撮影するポイント
洋服の物撮りには、平置き撮影やハンガー撮影、モデル着用といった方法があります。
平置き撮影は床といった平面に洋服を置く撮影方法です。洋服のブランドタグを見せたいとき、フードを広げて見せたいとき、裏地を見せたいときにも平置き撮影がよく用いられます。
モデル撮影は、予算がある場合は最もおすすめの撮影方法です。実際に人が着用するので、実際に着たときのイメージやコーディネートをセットでアピールできるでしょう。スーツなどフォーマル用ならオフィス街、デート向けの洋服ならカップルにいるようなシチュエーションで撮るなどすればより購買意欲を引き立たせるでしょう。
平置きで洋服を撮影するときのポイント
平置き撮影するときは、下記のポイントを抑えながら撮影してください。
しわや折り曲げでカジュアル感や動きを出す
洋服の中に紙やフェルトを入れて立体感を持たせる
左上から右下へ向けてライティングする
洋服の正面から撮影してパースを抑える
しわや折り曲げでカジュアル感や動きを出す
洋服にしわや折り曲げを作ると、カジュアル感や動きの演出ができます。しわを付けるときは大きく縦に作るのが基本です。トップスの素材のやわらかさを伝えたいときは、胴体部分に曲線を作ってください。トップスは腕の部分、ボトムスは膝の部分で折り曲げると動きの演出ができます。
洋服にたたみじわがあるときれいに見えないことがあります。洋服のたたみじわが気になるときはアイロンがけするとよいです。
ただし、洋服によってアイロンの上限温度が異なります。上限温度を超えたアイロンがけは生地にダメージを与えやすいです。アイロン仕上げ禁止の洋服もありますので、洗濯表示をよく確認してからアイロンがけしてください。
洋服の中に紙やフェルトを入れて立体感を持たせる
洋服を平置きするだけでは立体感が出にくいです。立体感を持たせたいときは、洋服の中に紙やフェルトを入れてください。紙やフェルトにより洋服が膨らんで立体感が出てきます。ただし、透けやすい素材の洋服に紙やフェルトを入れるときは注意してください。
左上から右下へ向けてライティングする
洋服の正面からライティングすると立体感を出しにくいです。ライティングで立体感を持たせたいときは、左上から右下へ向けて行ってください。日本人は横書きの文章を左から右へ読むことが多いです。そのため、左上から右下にかけて物を見る傾向があります。
洋服の正面から撮影してパースを抑える
洋服を撮影するときはパース(ゆがみ)に注意してください。写真にパースが生じると洋服が本来持つ形状を伝えにくいです。焦点距離の短い広角レンズはパースが生じやすいです。パースを抑えたいときは洋服の正面から撮影してください。平置き撮影時は洋服が斜めにならないよう、真上から撮影します。
平置き撮影については、こちらでも解説していますので参考にしてみてください。
ハンガー・トルソーで洋服を撮影するときのポイント
ハンガー撮影するときは、下記のポイントを抑えてください。
洋服に合いやすいハンガーを選ぶ
しわでカジュアル感を出す
ライティングで立体感を持たせる
洋服に合いやすいハンガーを選ぶ
木目のハンガーにはどのような洋服にも合いやすいメリットがあります。トップスの場合、肩の形がきれいになりやすいハンガーを選ぶとなおよいです。ボトムスの場合、ボトムス用のハンガーで吊るす方法もあります。
しわでカジュアル感を出す
ハンガー撮影時も縦にしわを作るとカジュアル感を出しやすいです。ただし、ハンガーに吊るした洋服だとしわを固定しにくいことがあります。しわを固定しにくいときは洋服の見えない部分にクリップで固定してください。
ライティングで立体感を持たせる
洋服の正面からライティングすると立体感が出にくいです。平置き撮影同様、立体感を持たせたいときは洋服の左上から右下へかけてライティングしてください。
洋服撮影に必要な機材とセッティング(簡易仕様)
洋服撮影で必須となるのがカメラ機材です。フリマアプリへの出品であれば手元にあるスマートフォンだけでかまいません。高価な機材を購入する必要はないです。フリマアプリで出品された洋服では平置きの写真がよく見られます。白の背景紙の上に洋服をセッティングし、しわや折り曲げなどの演出後にスマートフォンで撮影するだけと簡単です。
スマホを使った写真撮影のコツを知りたい方はこちらも参考にしてみてください。
本格的な洋服撮影に適しているデジタル一眼レフカメラ
ただし、スマートフォンは本格的な撮影に不向きです。本格的に洋服を撮影したい方はデジタル一眼レフカメラを選んでください。プロやハイアマチュア向けの一眼レフカメラは価格が高めですが、初心者向けの一眼レフカメラであれば4~5万円ほどで購入できます。
洋服撮影に適している標準レンズ
デジタル一眼レフカメラの場合、別途レンズが必要です。
下記のようにレンズの種類によって焦点距離が異なります。
※35mmフルサイズ換算
レンズの種類のうち、洋服撮影に適しているのが標準レンズです。焦点距離の短いレンズほど画角が広く、焦点距離の長いレンズほど画角が狭くなります。標準レンズは適切な画角で洋服を撮影しやすいです。
レンズにはズームレンズや単焦点レンズといった種類もあります。一定の範囲で焦点距離を変えられるのがズームレンズです。
レンズの選び方に迷ったときは、標準ズームレンズをおすすめします。一般的な標準ズームレンズの焦点距離は下記のとおりです。
24~70mm
28~70mm
24~105mm
28~105mm
※35mmフルサイズ換算
24~70mmの標準ズームレンズが1本あると24~70mmの範囲で画角を調整できます。一眼レフカメラによってはレンズキットで販売されています。レンズが付属されているレンズキットであれば別途レンズの購入は必要ありません。安い標準ズームレンズのキットなら5万円ほどの価格で購入できます。
必要に応じてライティング機材を用意
自然光でも洋服の撮影は可能ですが、日時や天候によって光の当たる方向や強弱が異なります。それぞれの洋服で光の当たる方向や強弱が異なると統一感を出しにくいです。ネットショップで複数の洋服を販売したいときは、下記のライティング機材を使用して統一感を持たせてください。
ストロボ
スタンド
ソフトボックスまたはアンブレラ
大型の白いレフ板
ストロボとスタンドで洋服をライティング
ストロボとスタンドがあると洋服の本格的なライティングができます。スマートフォンやデジタルカメラ内蔵のフラッシュでは、ライティングの方向を変えるのが困難です。しかし、スタンドに取り付けたストロボではライティングの方向を自由に変えられます。
カメラを選ばずにライティングしたいときはLEDスタジオライトといった選択肢があります。LEDスタジオライトは定常光(光が常時照射される)の機材です。カメラ内蔵のフラッシュは瞬間光となるため、撮影前に光の当たり具合を確認するのが難しいです。しかし、定常光のLEDスタジオライトであれば撮影前に光の当たり具合を確認できます。
ソフトボックスやアンブレラでやわらかな光を照射
ストロボを直接照射すると、光が強すぎることがあります。強すぎる光をやわらかくしたいときに便利なのがソフトボックスやアンブレラです。ソフトボックスやアンブレラがあると、拡散した光を照射できます。通販では写真撮影照明キットが販売されています。撮影用のソフトボックスやライト、背景布、スタンドなどが付属されているキットです。写真撮影照明キットであれば一つずつ揃える手間がかかりません。写真撮影照明キットによっては2~3万円ほど、価格が安い点も魅力の一つです。
大型の白いレフ板で光を反射
ストロボ1灯だと洋服反対側の影が強すぎることがあります。影が強すぎると洋服の質感が分かりにくいです。ストロボ2灯あれば影を抑えた洋服撮影ができますが、ストロボを増やす分だけコストがかかります。コストを抑えたいときは大型の白いレフ板を用意してください。レフ板によりストロボからの光を反射できます。
洋服撮影のセッティング
洋服撮影では下記の順番でセッティングしていきます。
背景を決める
背景の上または前に洋服を置く
必要に応じてライティングする
背景を決める
まずは洋服を目立たせるための背景を決めます。白、黒、グレーなどのうちシンプルな白が背景の基本です。ハンガー撮影では白い壁を背景にする方法があります。白い壁に汚れやホコリが付いているときはきれいに拭き取ってください。背景を用意できないときは撮影用の背景紙や背景布を購入するとよいです。
背景の上または前に洋服を置く
平置き撮影では背景紙の上に、ハンガー撮影では白い壁または背景布の前に洋服を置きます。洋服を置いたら、しわや折り曲げなどの演出を行ってください。平置きでは椅子や脚立があると真上から撮影しやすいです。椅子や脚立がないときは洋服を置く台を斜めにして撮影してください。
背景布の前に置くハンガー撮影では、スタンドに付けたポールよりナイロン糸でハンガーを吊るします。白い壁を背景にするときはテープでナイロン糸を止めてもかまいません。
背景についてはこちらで詳しく解説しています。
必要に応じてライティングする
演出が完了したら必要に応じてライティングを行います。ストロボ2灯用意するのが難しいときは左上からストロボ1灯、右下に白いレフ板をセッティングしてください。LEDスタジオライトでは光の明るさを10%~100%の範囲で調節できることがあります。洋服が明るく見えるように調節してください。
カメラを設定して撮影する
ライティングが決まったらカメラの設定を行います。写真の明るさを決めるカメラの設定は下記のとおりです。
洋服撮影の場合、絞りはF8~11の範囲で設定します。絞りを決めた後はシャッタースピードとISO感度で写真の明るさを決めていきます。手軽に設定したいときに便利なのがプログラムオート、絞り優先、シャッタースピード優先などのモードです。洋服撮影では絞り優先モードをおすすめします。
絞り優先は適切な絞りを撮影者が決められるモードです。シャッタースピードとISO感度はカメラが自動的に設定します。背景が白いとカメラが実際より明るいと判断し、写真が暗くなることがあります。白い背景で写真が暗くなったときは露出補正を+2EVほどに設定してください。
ホワイトバランスの設定
他にも洋服写真にはホワイトバランスの設定があります。色温度を決めるホワイトバランスで白いものを白く撮影できます。色温度が高いほど写真の青みが強くなるのが基本です。しかし実際よりも青みが強すぎると写真の色味が不自然になる恐れがあります。
自然な色味に仕上がりやすいのが太陽光の色温度です。太陽からの自然光とストロボの光が混ざっても、色温度がほぼ同じであれば問題ありません。
太陽光は5,500K前後の色温度と考えられています。LEDスタジオライトによっては5,500K前後の色温度へ調整可能です。自然な色味の洋服写真に仕上げたいときはLEDスタジオライトとカメラのホワイトバランスの設定を5,500K前後に合わせてください。
ピントを合わせて撮影する
カメラの設定が決まったら、洋服にピントを合わせて撮影します。最近のデジタル一眼レフカメラであればオートフォーカス機能付きです。オートフォーカスによりカメラが自動的にピントを合わせてくれます。
ただし、マニュアルフォーカスレンズをカメラに装着しているときは撮影者によるピント合わせが必要です。洋服にピントが合うまでレンズのフォーカスリングを回してください。
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まとめ
今回は洋服を上手に撮影する方法について、下記の内容を解説してきました。
・洋服には平置き撮影やハンガー撮影の方法がある
・洋服写真の背景は白が基本
・洋服にしわや折り曲げを作ると、カジュアル感や動きを演出しやすい
・左上から右下にかけてライティングすると立体感を持たせやすい
・ストロボ1灯のときは洋服の左上にストロボ、右下に白いレフ板をセッティングする
フリマアプリへの出品であればスマートフォンで十分です。しかし、本格的に撮影したいときはデジタル一眼レフカメラと標準ズームレンズ、ライティング機材を用意してください。カメラやレンズ、ライティング機材をすべて揃えるとコストがかかりやすいです。
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・長谷川克己:有名インテリアショップのECやAmazon、楽天市場でのマーケティングを担当
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