売れる商品写真を撮るためには、ECやSNSを見ているユーザーの目を引くこと、購買意欲を湧かせることが大切です。写真を通じて商品の魅力をユーザーにきちんと届けることで売上を自ずと伸びていきます。本記事では物撮り初心者でもわかる簡単な売れる商品写真の撮影知識と、すぐに実践できる具体的な対策をまとめます。
売れる商品写真とは?
売れる商品写真とは、ECやSNS内で消費者の目を引き、商品の魅力を伝えることで購買意欲を高める写真です。ヒトの第一印象は、わずか0.05秒で決まると言われています。そのため商品写真のクオリティによってECの売上は大きく変わります。
売れる商品画像を撮影するために、届けたい商品の魅力は何か、その魅力を引き出すためにはどのように撮影すれば良いかを考えていきます。
売れる商品写真の撮り方11のヒント
物撮り初心者の方が、売れる商品写真を撮るためのヒントです。
①:商品写真をマーケティング活動の一部と考える
②:商品の魅力や恩恵を整理する
③:商品を届けたい人の思考や行動を整理する
④:出品するECサイトが求める写真の要件を確認する
⑤:①~④を満たすための必要な商品写真を考える
⑥:商品写真の背景を決める
⑦:小物を揃える
⑧:写真の構図を決める
⑨:ライティングをセットする
⑩:カメラの撮影設定を決める
⑪:画像編集を施す
商品写真をマーケティング活動の一部と考える
マーケティングの戦略検討時に良く使われる
AIDMAというフレームワークは、商品画像にも当てはめて考えることができます。ECでの売上が伸びている商品ブランドはすべてこれらを満たしていると考えてください。
・Attention:消費者の目にとまる
・Interest&Desire:世界観や魅力伝えて購買意欲を高める
・Memory:ブランドイメージや利用シーンを記憶してもらう
・Action:商品情報を正しく伝え安心して購入してもらう
商品の魅力を整理する
考えるべきこととしては以下を参考にしてみてください。
・商品の魅力やコンセプトは?
・商品によって得られる恩恵は?
・競合との違いや自社の強みは?
「商品によって得られる恩恵」とは商品を利用した結果、利用者がどうなるのか・何を得るのか、です。例えば、P&Gの
ファブリーズであれば、ファブリーズを使うことで「除菌できる・家の嫌な匂いが消える」という結果を訴求したことで成功したブランドの一つでしょう。商品の魅力と恩恵の訴求についてもっと詳しく学びたい方は、
ドリルを売るなら穴を売れという本が有名です。
商品を届けたい人の思考や行動を整理する
次に商品の使って欲しい人について整理します。主な整理の観点は以下です。
もし商品の企画時にカスタマージャーニーマップなどを作っている場合は、それを使っても構いません。
・商品を届けたいペルソナは?(年齢、居住地、性別、職業、普段の生活など)
・写真を見てくれた人に何を伝えたい?(機能性、品質、価格の安さなど)
・商品画像を掲載する場所は?(Instagram、Amazon、自社ECなど)
出品するEC・SNSの写真要件や特徴を確認する
掲載するECやソーシャルメディアが決まっている場合は、そのWebサイト・アプリの特徴や画像のアップロード条件を確認しましょう。
ECやSNSに商品写真をアップロードする際に気をつけるべき、商品画像の要件の例は以下です。
・画像サイズ比率 →【例】Instagramフィード投稿:正方形(1:1)
・画像サイズ → 【例】Amazon:長辺が10,000ピクセル以下
・解像度 →【例】350dpi以上
・画像ファイル → 【例】jpeg、png
・写真全体に商品が占める割合 → 【例】Amazon:85%以上
【2024年】Amazonの商品画像ガイドラインを徹底解説|サイズや設定のコツも
必要な商品写真を考える
商品写真は「プロダクトカット」「イメージカット」「モデルカット」の3種類に大きく分かれます。
プロダクトカットは白い背景で商品単品を写し、形状や色味などを正確にユーザーに伝える役割を担います。Amazonや楽天では必須の商品写真です。一方でイメージカットとは、商品ブランドの魅力や世界観を表現した商品写真です。モデルカットは、商品の利用イメージを消費者に具体的に想起してもらうために用いられることが多いでしょう。
これらの物撮りの基本知識やご自身での撮影方法は以下記事で詳しく解説しているので、こちらもご覧ください。
【自宅で物撮り】商品撮影のアイディア9選と商品ジャンル別の撮影のコツを解説
背景を決める
商品写真を通じて伝えたい内容やコンセプトが決まった後、いよいよ撮影準備に入ります。まずは商品写真について背景を考えましょう。なぜなら、商品写真では商品自体より背景のほうが写る面積としては大きく、写真の印象を大きく左右します。
一般的には白い背景を用いられることが多いです。白背景は商品自体を目立たせるという理由もありますが、Amazonや楽天といったECサイトでは規定により白背景と定められている場合もあるためです。
色によって与える印象の違いは以下の通りです。
・レッド:情熱、強さ
・ピンク:可愛らしさ、優しさ
・イエローやオレンジ:明るさ、活発さ
・グリーン:癒し、安らぎ
・ブルー:冷たさ、清涼感
・パープル:上品さ、妖艶さ
・ブラウン:安心感、温もり
・ホワイト:清潔感
・グレー:落ち着き
・ブラック:重厚感、高級感
単色の背景以外にも英字新聞やレース布、大理石などの背景もおすすめです。これらの背景については以下記事で詳しく解説しています。
【保存版】物撮り・商品撮影の背景パターン15選|おすすめの背景グッズも紹介
小物を決める
イメージカットの場合は、季節感を表現する植物や商品の含有物を横に添えて撮影するのも良いでしょう。小物などを使った写真の演出方法は以下記事で詳しく解説しています。
【イメージカットの撮り方】インスタ映え撮影アイデア13選とアイテム別の撮影ポイント
商品写真の構図を決める
写真デザインの使いやすい構図として「水平の構図」と「俯瞰(真上から)の構図」を紹介します。
「水平の構図」とは、真正面(0度~30度)の高さから撮影する構図です。商品を立体的に見せたい場合はこの構図がおすすめです。
「俯瞰(真上から)の構図」とは、名前の通り真上から撮影する構図です。平たいものを撮影する場合などに適しています。
写真デザインの構図は他にもたくさんあるので、以下記事で詳しく見てみてください。
【保存版】写真を上手く撮るための構図15選|構図を活用するポイントもあわせて解説
ライティングを決める
魅力的な写真を撮るためには光(ライティング)が欠かせません。光(ライティング)には「自然光」と「人工照明・照明器具」の2つがあり、それぞれの特徴と使い方を紹介します。
自然光
自然光とは、太陽の光のことです。窓際など太陽光が入る場所があれば、大掛かりな準備がいらない上に初心者でもおしゃれに撮影することができます。自然光で撮影する際は、室内の照明を必ず消しましょう。自然光を和らげたい場合は、カーテンのレース使って調整しましょう。
人工光・照明器具
ストロボなどの照明器具を使ってライティングします。ストロボとは、シャッターを切った瞬間に強い光を発生させる機材です。瞬間光のため、カメラが取り込む光の量が増え、被写体がくっきりと映った写真を撮影することができます。シャッターを切った一瞬しか光らないので、照明位置の微調整に時間がかかりやすいのが難点です。また「シンクロターミナル」と「ホットシュー」というストロボを接続するための箇所がデジカメになければ使用できません。
機材を揃えるのにお金はかかってしまうものの、場所や時間に問わず光の調節が自由にできるためプロクオリティの撮影をしたい場合はおすすめです。
光の当て方
商品への光の当て方としてはとしては、「順光」「斜光・サイド光」「逆光」の3つがあります。
「順光」とは被写体に光がまんべんなく当たっている(太陽が撮影者の後ろにある)状態のことで、立体感がない分くっきりと鮮やかな写真を撮ることができます。
「斜光・サイド光」とは、被写体に横から光が当たっている(太陽が撮影者の側方にある)状態のことで、立体感や質感を出すのに向いています。
「逆光」とは、被写体に後ろから光が当たっている(太陽が撮影者の前にある)状態のことで、被写体が暗くシルエットがくっきりした写真を撮ることができます。
商品撮影においては「斜光・サイド光」がおすすめです。逆光に関しても、編集によって高クオリティな写真に仕上げることも可能です。
その他ライティング器具
また、自然光の場合でも照明器具を使った場合でも、必ず影となってしまう部分が出てきてしまうので「レフ板」や「ディフューザー」も一緒に利用することをおすすめします。
レフ板とは、光を反射させて被写体の影の部分に光を当てる道具です。基本的には光源の対角線上に配置することで光を反射させ、光の足りない部分に光を当てます。予算的に厳しい場合は、白画用紙やコピー用紙などでも代用できるので是非使ってみてください。
ディフューザーとは、光を拡散させ、白飛びを防ぐ役割を持っています。つまり、光を和らげてくれる道具です。そのままの光を当てると、光が強すぎたり固すぎる場合があるので、ディフューザーを使うことで、やわらかい印象を持った写真を撮ることができます。
カメラの撮影設定
原則は商品全体にピントを合わせる
原則として商品写真は、主役である商品全体にピントを合わせ商品の形状や色味がしっかりわかるようにしましょう。一方で、あえて商品の一部をぼかすことでおしゃれさを演出する方法もあります。設定を少しずつ変えて何度も撮影し、後から良いものを選定すると良いでしょう。
手ブレ防止に三脚がおすすめ
物撮りは比較的小さな物を扱う、繊細な撮影であるため手ブレが起きやすいです。そのため、商品撮影を行う際は三脚を用いて撮影を行うことをおすすめします。
カメラの調整機能を活用する
撮影時、目で見える範囲の光や構図を意識するほかに、カメラの設定を調整することでより理想的な写真撮影に近づくことができます。商品撮影で使うカメラの設定は主に「シャッター速度」「F値」「ISO感度」「ホワイトバランス」「露出補正」があります。
・シャッター速度
光を取り込む速度のことです。この数値が高ければ手ブレが起こりにくくなります。かといって十分な光がない場所で高く設定しすぎると手ブレが起こりやすくなってしまうので適切に設定しましょう。
・F値
絞りとも言い、ピントのあう前後の範囲を調整することができます。F値が小さいとピントのあう範囲が浅くなり、F値が数値が大きければ大きいほど、ピントがあう範囲が広くなりますが、取り込む光の量は少なくなります。設定によっては暗くなってしまうことがあるので、暗くなってしまった場合はシャッター速度やISO感度で明るさを調整しましょう。
・ISO感度
暗さに対する強さのことです。強く設定すればするほど暗い場所での撮影に強くなりますが、その分画質が粗くなりやすくなってしまうので注意が必要です。
・ホワイトバランス
被写体が自然な色に写るよう調節する機能のことです。使い方によっては実物と全く違う色味になってしまうことがあり、ユーザーとのトラブルになりかねないので注意する必要があります。
・露出補正
写真の写りを明るめにするか暗めにするかを調節する機能のことです。こちらも被写体が最も正しく、魅力的に写るように注意する必要があります。
レタッチ・画像編集を施す
写真編集ソフトを使えば、撮影した写真をさらに洗練されたものになるでしょう。例えば、意図しない影を消す、色味を整える、背景を消すなどの工夫を凝らせます。最初は難しいと思いますが、慣れればかんたんに商品の品質を高められます。レタッチのおすすめツールとしては以下です。
まとめ
今回は売れる写真とは何かについてや、売れる写真を撮影するための基本的な内容についてご紹介しました。ECや商品ブランドをの売上を成長させるためには、消費者を惹き付ける商品写真は必須です。もし自身で撮影することが難しいと判断した場合は、撮影代行業者という選択肢もあるので是非検討してみるとよいでしょう。
関連するオンラインセミナー
物撮り・商品撮影やEC運営に精通したスタッフが執筆!
【執筆・監修・顧問経歴】
・長谷川克己:有名インテリアショップのECやAmazon、楽天市場でのマーケティングを担当
・山田和伸:松濤スタジオを経て、カメラマン熊谷隆志へ師事後に独立